2023年12月23日

言わずと知れた超名作映画タクシードライバーについて新しい知見を得ました。

拳をあぶる謎のワンカットは、古代ローマの英雄、ガイウス・ムキウスが参照元のようです。

日本語での情報がほとんどないので監督や関係者が言及しているのかすら不明です。この記事は個人の感想です。

拳をあぶるシーン

そもそもそんなシーンあった?って話からです。

再現してみました

コンロが画面下ギリギリに映るので、よく見ないと気づけないと思います。私も最初は「クルミでも握りつぶしているのかな」と思いました。直前の腕立て伏せのシーンのほうが印象的でした。

一瞬のシーンですが、完全に左手をコンロの火にかざしています。かざすなんてレベルじゃない、あぶっています。

痛みに耐える訓練とか地獄の炎とか、トラビスの異常性を示唆する目的?とか色々な考察がされていました。他の監督作品との類似に着目するケースも。これは説得力があるかも。ミーンストリートでも主人公が同じようなことをしています。

 

気になって英語で検索したところ、古代ローマの英雄「ガイウス・ムキウス」が参照されているのでは、というRedditの書き込みがすぐ見つけられました。

検索で出てきたレポートが大変興味深く気になりますが、無料分までしか見ていません……。これさえ見られれば全て解決する気がします。しばらく悩んで有料登録するかも……。でもその内容をそのままネットで語るわけにはいかないだろうし……。うん……。というわけで以下は素人の考察というか感想です。


古代ローマの英雄

ガイウス・ムキウス・スカエウォラは、紀元前508年、味方に相談せずに一人で敵陣に乗り込み、王と間違えて秘書を殺してしまい捕まった人です。火で拷問される予定だったものの、先んじて自ら右手を焼いたことで、勇気を示し解放されたとのこと。

これを聞いたポルセンナは恐れかつ怒り、ムキウスの身体を火であぶって拷問することとした。ムキウスは従容としてこれを受け入れるどころか、ポルセンナよりも先に松明をつかみ右手に押し当てて、痛みの表情を出さずに炎が右手を焦がすままに耐えたという。(Wikipediaより)

揺るぎない信念を持つ勇気ある若者ではあるものの、誰にも相談せず計画を進めたり、勢いで失敗したり、自ら手を焼くなど常軌を逸しています。

この伝説は日本ではあまり知名度が無いように思えますが、絵画が何枚も描かれているのを見るに、欧米諸国ではかなり有名な題材のようですね。絵画や風刺絵しか私は確認できていませんが、小説や演劇など、その他の文学作品にも広く継承されていそうです。興味深いです。

 

類似点など

ガイウス・ムキウスは王を暗殺しようとし、トラビスは大統領候補を暗殺しようとしています。また、どちらも暗殺は失敗し、ほぼ勢いで別の人を殺しています。

誰にも相談せず一人で暗殺計画を行うところや、一般感覚のズレなどの人物像が共通しているように思えます。(少なくとも本人の中では)揺るぎない信念があるというのも似ています。戦争終結に向けた暗殺とテロ行為の差は大きいですが、目的も近いものがあります。

拳を焼くシーンだけではなく、作品を通じて似ているという印象です。完全に意識されていると思います。

トラビスも表情を崩さずに拳を焼いています。ただ、ガイウスは右手で、トラビスは左手を焼いています。関係あるかは分かりませんが、トラビスが鏡に話しかけているシーンとつながりがあるかも。それか明確に異なるものだということなのかも。終盤で派手に右手を吹き飛ばされるおじさんがいますが、それは関係あるかな……。ないかな……。

これは関係ないかもしれませんが、ムキウスは暗殺の前に元老院の許可を得たそうです。タクシードライバーでは年長の先輩に相談するシーンがあります(具体的な計画には触れませんが)。いややっぱりこれは関係ないか……。そうか……。

手を焼くという行為は、勇気や覚悟を示すためのものだったのだと納得しました。

トラビス自身がこの伝説を知っているかどうかは不明ですし、彼にとっては全く別の目的があったのかもしれません(特に目的がなかった可能性もあります)。しかし制作上、演出上の意図としては意識されていたのでは。少なくとも私はそう感じました。

伝説から2500年、文化や歴史を踏襲した先にこの映画があるのだと思うと本当に贅沢です。

経緯

今回ゲーム制作イベントのためにタクシードライバーの映画を見直しました。室内の間取りを考えたりするのがとても楽しかったです。トラビスのアパートと売春宿は同じ建物で撮影されたらしいということも今回初めて知り、まだまだ知らないことばっかりだなと思いました。上記の伝説を知り、途中からゲーム制作のことを忘れ拳を焼くシーンを撮って満足しました。ゲームを作るにはちょっと疲れていたのかも……。上手く撮れた(個人比)のでなんとかVRM対応形式で完成させたい気持ちがありますが、例により最適化出来るか分からないので、もう少し習熟が必要になりそうです。

タクシードライバーを視聴するのは数年ぶりでした。こんなシーンあったけ?と思ったり、存在しないシーンの記憶があったりしました。

おまけ

「手を焼く」という日本の慣用句がどこからきているのかちょっと気になったものの、火傷からきているらしいということまでしか分かりませんでした。もしかしたら上記の伝説の影響がどこかにあったのかもしれない。なかったかもしれない。

その他、うろ覚えの内容についてChatGPTに聞いたら衝撃の新事実が。

その他の監督作品を見直せば、また新たな発見があるかもしれません。

地獄の業火説は個人的には違うんじゃないかなと思います。トラビスは天然で思い込みが強い社会不適応者ですが悪人ではないので。

ミーンストリートを見た後では痛みに耐えているだけのように見えなくもないです。前述のレポートの中身が気になります。カメラワークにも言及しているようですし、きっと説得力がある内容のはず……。

おわりに

名作が名作たる所以の一端に触れられた気がします。

結局何が由来というか参照元なのかは分かりませんし、由来なんてないのかもしれません。どちらにしても、単一のものではなく複合的なものなのだと思います。

全てを理解することは難しくとも、こうして一つ一つの可能性を吟味し、その作品を少しでも深く知ることが出来れば嬉しいですね。

Categories: